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全く何もなかった新地の土地に何度も夢を思いめぐらせてデザインをしき、道を作り、植えるための1000個の穴を掘って、50cm大のそれらの穴一つ一つにピートモスと籾殻をいれました。見渡しの良いその辺りには私達以外の人影はなく、高い空の下、聞こえるのはひばりのさえずりと遠くから追いかけてくる風の音だけ。そんな中での作業はひどく感動的なものでした。
今は小さいこのブルーベリーの苗は、私の手によってこの地で生きてゆく事となった。それはなにかしら神々しく、「命の誕生」に居合わすことができた喜びと良く似ている。植える一本一本の苗木から、やがてこの樹が大きくなり出会うであろうたくさんの人達の笑顔が見えてくる。今、この瞬間にこの場にいて、こんな風に関われるというのは、なんという喜びと幸せか。誇りを与えてくれるこの仕事に感謝の念が絶えない。
はじめてブルーベリーの苗を植えるその時に、ピートモスと籾殻が入った大きな穴の中にたっぷりの水が流し込まれている中で、私は康子さんと向かい合った。穴をはさんで正面にいる彼女は言いました。
「今からブルーベリーの植え方を伝授します」
きりりと身が引き締まり、その言葉の後ろにある彼女が生きてきた歴史と信念、そしてその重みを感じた。こんな未熟な自分に惜しげもなく伝えようとしてくれることに、うまく答えられるかどうか分からなかったけれど、きちんと受け止めたかった。水が入りどろどろになった苗床を一生懸命にかき混ぜるその姿からひたむきさを感じ、根をほぐす姿からは優しさと愛情を感じ、植え終わった後にはすがすがしさを感じた。この始まりの時に立ち合えた幸福を私は忘れる事はないだろう。何十年か経って年をとり、いろんな事が変化しても、このブルーベリーは変わらずここにいてくれて、訪れる度にこの時の想いを私に伝えてくれる。そしてその想いは私の子らに、友にと伝えられていく。そんな場所が自分にあるという事、共有できたという事、幸福に満ちたこの時間と場所がこれから訪れるたくさんの人にもそうであって欲しいと願わずにはいられません。